2016年8月23日火曜日

夕刻の嵐

ドアを開けると風雨が吹き込み、一瞬のうちに玄関が水浸しになりました。
日本列島の上を台風が通過しています。
通りを歩くと傘は裏返り、手に持った麻のジャケットは元の色がわからないほど濡れてしまいました。
駅に着くと電車は遅延し、僕は途方に暮れます。
大きなため息が一つ、左右のスニーカーはたっぷり水を吸って、足取りは重くなりました。

仕方なく家まで引き返し、シャワーを浴びて新しいシャツに着替えました。
この一時間弱の出来事が、本当にあったことなのかどうかが、わからない気がしました。
確かに部屋には濡れたジャケットが干してありますが、それだけでは証拠として不十分に思えます。

時折このように自分のしたことが信頼できないことがあります。外で話している自分、家で絵を描いている自分。どちらも不確かな存在だと感じるのです。

そんなときでも絵は確かに手元にあり、その絵について話していることに、僕は疑いを持っていません。
だから僕の絵は自分以上のものなのです。