2014年7月16日水曜日

道に迷う

ソファーに横たわり、窓の外を眺めていると、遠い夏の記憶がよみがえりました。

真夏日、30度をこえる室温が、現在に留まろうとする意識を弱らせます。
なす術無く、押し寄せる記憶の波に身を任せました。

炎天下の裏道。どぶ川を渡すコンクリートの柱。
何処からともなく聞こえてくる、嵐のような蛙の声。
雨の予感。

背の高い雑草を引っ張ると、掌が露で濡れました。
擦っても消えない青い匂い。
僕はそこら中に生えている草を蹴り上げます。そして宙に舞った埃をくぐり、ただ走りました。


僕はあまり地図を見ません。
道に迷わなければ、この場所から離れることができないからです。

2014年7月11日金曜日

僕の街

嵐が過ぎ去り、日が射します。
台風が東京に夏の空気を送り込みました。

午後6時、東の空、鉄塔がオレンジ色に照らされています。

強い光と濃い影のコントラスト。
デ・キリコの街。

僕にはやるべきことがあります。
自分の街を描かなければならないのです。

2014年7月1日火曜日

個展『街の背中』が、6月29日に終了しました。
今回の個展では、街に住む人々の営みを描いたポートレイトシリーズや、現実と絵画を繋ぐ立体作品を、初めて展示しました。

展示タイトル『街の背中』とは、街の表面にある、住居や店舗などという機能的な部分の裏側をあらわしています。街の機能的な部分を「街の顔」とし、その裏にある街の気配を「街の背中」と名付けたのです。

そして個展の出品作には、「街の顔」に顔がないのであれば、「街の背中」に顔があるのではないかという仮定をもとに、すべてどこかしらに顔を描き出しました。

顔を描けば描くほど、僕は街の中に入り込み、よく知った街の外観を望む視点から離れていきました。
内部はとても余所余所しく、僕はそこに居場所を見つけるために、自分の中を探りました。自分の中には他者がいて、彼らはとても自分と似ていたのです。

僕の視点や仮定は、あまりにも私的なものかもしれません。しかし、僕は自分の描いた人々や建物は、他者の心の奥に眠っているという可能性を信じています。

ご高覧してくださった皆様、また、僕の絵を信じてくださっている方に、ここで感謝の気持ちを伝えたいと思います。

誠にありがとうございました。