2012年1月27日金曜日

真夜中の路地

雪の残る道を、犬が歩いています。
最近の犬はあまり吠えません。少なくとも僕にはあまり吠えないようです。

青年が赤いロープを持ち、白くて大きな犬を導きます。
首輪は長い毛に隠れて確認できません。

銭湯が壊された空き地に、眩しいドラックストアができました。
この街に空き地ができると、決まってドラックストアかコインパーキングが建てられるのです。

ドラックストアには三角形の大きな駐車場があります。
そこは真夜中に犬が通る道です。

銭湯の亡霊、コインランドリーの右には狭い路地があります。
左右をブロック塀に囲まれた道。よく知っている道です。
塀の内に何があるのかはわかりません。

隅に集められている汚れた雪を蹴飛ばしました。
それはもう氷のように固まり、ただ鈍い音をたてたのです。

目を閉じると粉雪が宙に舞っています。
身動きも取れないほどの雪の壁。

冷たい空気は街灯の光をいつもより強く感じさせました。

2012年1月26日木曜日

寒い日が続いています。
夕方の雨が雪に変わり、瞬く間に街を白く覆いました。
雨音は消え、静かに雪は積もります。
しばらくすると遠くで雷が鳴り始めました。
それを合図に雪は雨に戻ったようです。

朝になり、窓ガラスについた結露を掌で拭うと、隣家の屋根にはまだ溶けきらない雪が見えます。

凍結した道路の上を、自動車が濁った音をたて、慎重に通り過ぎていきました。

2012年1月19日木曜日

地下鉄のホームで電車が来るのを待っていました。
目の前には煤けた壁。目線を下に移すと、小さな鼠が二匹見えます。

電車が到着するたびに吹き付ける突風も、彼らにはカーテンを揺らす微風ほどの印象も残さないのでしょう。

2012年1月15日日曜日

白黒猫

駅からの帰り道、太った白黒猫が僕の前を通過しました。
この街で見かける半分ぐらいの猫は白黒猫です。

猫は僕の視線に気がつくと、地面にゴロリと寝転びます。
それから立ち上がるとすぐに、近くの塀に飛び乗りました。

今日は気温が低いけれど、風がなくて、穏やかな一日です。

しばらく壁沿いを並んで歩きました。
歩く速度は僕と同じくらいです。
角にさしかかるとその猫は、こちらを見もせずに塀の内側に姿を消しました。

2012年1月8日日曜日

割れた鏡を元に戻す

部屋の絵を描いています。
去年の個展に出品しようと思い、制作していたものです。
直前に出品をとりやめたので、一度は未完のまま放置していたのですが、最近再び描き始めました。

部屋の壁に絵を立て掛けていると、時折、絵が話しかけてきます。
絵は気まぐれで、僕は振り回されながらも、その声にしたがって筆を動かすのです。

2008年、初個展のタイトルを「割れた鏡を元に戻す」としました。

キャンバスを鏡として捉えると、そこには自分や周りの風景が逆さまに映ります。
僕は鏡に投石し、バラバラに割れたパズルのようなガラスの破片を、裏返しに組み立てなくてはなりません。

しばらく作業を進めると、鏡のピースが足りないことに気づきます。

2011年は破壊的な現実を前にして、失ったものも多いでしょう。
失ったピースは想像力と技術で埋める必要があるのです。


本年も張り切って絵を描こうと思っています。何卒、宜しくお願い致します。