2013年9月25日水曜日

小さな死

風の強い日に、人身事故で電車が止まりました。
ホームに立つ若い女性が、迷惑そうな顔で、携帯電話の向こうにいる相手に、死ぬのは勝手だけど、他人に迷惑をかけないでほしいと言いました。
一つの命が産声をあげ、ある期間を生きたあと、自ら死んだことで蔑まれました。

再び動き出した窮屈な車内で、自分の内に眠っている弱さや痛みを思い起こしました。

2013年9月6日金曜日

やがて去る夏の日の神様

ラジオから流れる懐かしい音楽を聴きながら、木漏れ日に満たされた公園を走りました。
緑色の諧調をもった木の葉の模様を足の裏に感じ、残り少ない夏の日を記憶するようにペースを上げます。

帰り道、熱をもった身体と汗を沈めるために、空き地の前にある、日陰に隠れた自動販売機で何か飲み物を買うことにしました。
ポケットから小銭を取り出し、コカコーラのボタンを押すと、冷たさを予感させる雑な落下音がします。
コーラを取り出そうとして身を屈めると、地面に十円玉が落ちていることに気がつきました。

コンクリートのブロックでできた低い段差に腰をかけ、空に浮かぶ大きな雲を眺めていると、左右から飛行機がやってきて、空中で交差しました。
それぞれの目的地に向かう機体は、真っ直ぐ進んでいるように見えます。

コーラを飲み干したとき、もし夏の日の神様がいるのであれば、ここに違いないと思いたち、拾った10円玉を夏草の生い茂った空き地に放り投げました。