2016年9月30日金曜日

大人の扉(冬)


2015年にソウルのGALLERY GODOでの個展に出品した「大人の扉(冬)」という作品が光州市立美術館(韓国)に収蔵されました。
2014年から続けている「街の背中」シリーズの一点です。

韓国では2011年から隔年で個展を開催していますが、その度に温かく迎えていただき、また支持を得ることが、作家活動を続ける上での助けとなっています。

現在は10月末に予定している、東京での個展の準備をしています。
僕の絵は年齢を重ねるほどに、洗練どころか混沌に向かっているようです。しかしこの混沌も、いずれ系統立てられる時が来るでしょう。
作家はその宿命を知りながらも、芸術の当事者であるために、暗闇の中を手探りで進む役を演じなくてはならないのです。

2016年9月20日火曜日

機上の光景

滑走路に入った飛行機は、進路をしっかりと見据え、エンジンの振動で小刻みに揺れています。
合図とともに車輪が加速し、機体は傾きを強め、ふわりと浮かび上がりました。

遠ざかる地面、海には船が散らばっています。
建物の集合体である街はとても静かな様子で、そこに住む人々の動きは何も見えません。道を走る車ですら無人のように感じます。

大きな雲の影がくっきりと大地に映っていました。
地上ではただ受け入れるしかない、雨や日陰も、機上から見れば、その理由は明らかで、真理に近づいたような気持ちになります。
しかし僕たちは、病気や交通事故で簡単に命を落とし、その広い視野からは見ることができないとても小さな出来事に運命を握られているのです。

しばらくすると、機体は水平飛行の体勢になりました。すぐ下には白い雲の絨毯があります。辺りは晴れ渡った空に囲われていますが、この雲の下は雨が降っているに違いありません。
僕は座席を少し傾け、目を閉じました。あとは着陸を待つだけです。

2016年9月4日日曜日

消えた羽

駅までの道のり、晴れた空は心を少し軽くしてくれます。
総合病院の駐車場前に差し掛かったところで、前方に鳩の柔らかい羽が浮遊しているのが見えました。ゆっくりと辺りを漂いながら、地面に降りてきます。
突然、後方から音もなく、乗用車が僕を追い越していきました。
その勢いで羽は回転し、再び高く舞い上がります。
太陽と羽が重なったとき、眩しくて目を細めると、僕はそれっきり羽を見失ってしまいました。

2016年9月3日土曜日

桜の葉

嵐と晴天が繰り返すたびに季節は移ろい、夜には寒さを感じることもあります。
昼の日差しを受けているときは発汗しますが、近いうちにそのことも懐かしくなるでしょう。
カーテンを揺らす風。落ち葉もアスファルトをカラカラと転がります。
近くにある中学校の桜の木は、春には満開の花を咲かせ、夏には清々しい緑の葉を見せてくれました。
すべての葉が落ちた頃、僕は厚手の上着を着込み、その記憶を思い出すことはあるのでしょうか。