2012年2月27日月曜日

大きな鳩

駅のベンチでぼんやりしていると、周りにたくさんの鳩が寄ってきました。
鳩は華奢な脚で太った身体を支え、首を前後に揺らしながら、忙しなく動き回ります。

鳩が嫌いな友人は、彼らを見ていると大きくなったところを想像してしまい、気分が悪くなるといいます。
巨大な鳩で混み合った駅のホームを歩くのは、確かに愉快な体験とはいえないかもしれません。

僕は今後、鳩が巨大化することはないと考えていますが、そのことを伝えても、彼の不安は解消されないのでしょう。

2012年2月19日日曜日

僕はサッカー選手になれない

大学4年のある日、23歳の僕は、深夜に海外のサッカー中継を観ていました。
とても精悍な選手たちが華麗なプレーを見せています。

その様子に引き込まれながら、僕はあることに気がつきました。

もう彼らのようなサッカー選手になることはできないだろうということです。

それまで、サッカー選手になりたいと思ったことはありません。しかし僕はどんなことであれ、自分の意図した将来を目指して生きていくことができるだろうと思っていたのです。
この気づきは僕に強い衝撃与え、それまでの自分とはまるで違った人間になったかのように感じました。

素晴らしいサッカー選手になることはもう出来ません。またそれ以外にも閉ざされてしまった可能性は多いでしょう。しかし同時に、画家としていい作品をたくさん残したいと強く思いました。

2012年2月14日火曜日

カラスの子

街に住むカラスは、針金のハンガーやビニールテープで巣を作ります。
ずいぶん昔から繰り広げられている風景です。

僕はそこで生まれたカラスの子と同じように、その巣に懐かしさや温かみを感じます。

2012年2月7日火曜日

今日のこと

雨は午後になるとやみましたが、そうかといって晴れ間がのぞくわけでもなく、すっきりしない天気が続いています。

考え事をしていると、誤ってパレット上の油絵具に手をついてしまいました。
油絵具はとてもひんやりします。
いろんな色を触ってみたくなったので、そのままパレットを大きく撫でてみました。
掌には、様々な色が混ざり合い、自分の手とは思えないほど美しくなります。

猫が窓の外で、笑っているのか、悲しんでいるのか、わからないような声で鳴いていました。

2012年2月5日日曜日

寝ぼけた街のグレー

週末の朝、電車で微睡む彼や彼女。
とてもきれいな色の服を着ています。

地下鉄の階段を上りきると、鋭い朝の光に目を細めました。
約束の時間まで、まだ少しあります。

僕のいない薄暗い部屋では、青く華やかな魚が、ゆっくりと尾びれを揺らしているはずです。

2012年2月2日木曜日

夕焼けグラウンド

午後4時、眠気を感じたので、部屋の空気を入れ替えるために窓を開けました。
昼間もカーテンを閉め切り、蛍光灯の明かりで絵を描いています。
カラスが2羽、南から北へと飛んでいくのが見えました。


僕の通っていた高校の隣りには大きな神社があります。
そこでは長い尾を持つ鶏を放し飼いにしており、僕は毎朝それを見るのを楽しみにしていました。

日曜日の夕方、グラウンドには神社から無数のカラスがやってきます。
赤い土、黒い鳥。
当時、暇を持て余していた僕はしばらくその様子を眺めていました。

最近、絵を描き始めたきっかけを尋ねられることが続き、自分なりに美大受験を決めた高校時代のことを思い出しています。

僕は子どもの頃からぼんやりとしたところがあり、あまり多くのことを覚えていません。
赤く染まったグラウンドにカラスのいる風景に意味はあるのでしょうか。