2011年1月3日月曜日

思い出のバルテュス

バルテュスは自分の制作を、未習得の言語で小説を書いているようなもので、絶望的だと言っていたそうです。

10年前に彼が亡くなって、その年に発売された画集を見ています。
僕が最初に買った画集でした。

デフォルメされた空間と何度も強く塗り込めた絵肌を見て、これが油絵なのだと思ったものです。
バルテュスを介してピエロ・デラ・フランチェスカやプッサンに興味をもちました。

彼の作品の中には、日本の古い絵画をテーマにしたシリーズがあります。
他の作品に見られる、身に付いた密度の高い立体表現は見られず、平坦で奥行きのない表現です。習作的な意味合いが強く見えます。
バルテュスは初期ルネサンス絵画に通じる、日本の絵画の平面性に特に着目しているようです。

僕はこの絵を見ると、心がひりひりします。

「未習得の言語で小説を書いているようなものだ。」
その言葉が切実に響いてくるのです。

新しい年になりました。

僕にとっても制作中はわからないことばかりです。
バルテュスは絶望的だといいましたが、一方でやりがいも感じていたのではないでしょうか。

問題を打開するには、もっと工夫をして描かなくてはなりませんね。
本年も宜しくお願い致します。