殻に包まれたクルミが見つかりません。
この街はものに溢れているようで、本当に必要なものが手に入らないのです。
やけに明るいペットショップに入り、かわいい子猫たちのケースを抜けて、小動物の餌の棚に向いました。
そこには殻から取り出されたクルミがあります。
最近ではリスですら、自分でクルミの殻を割らないのでしょうか。
スペインの古い静物画の中にある、人々の生命を支えるクルミが欲しいのです。
僕は胸中の空洞に靴音を響かせながら、地下鉄のホームに向いました。