2014年2月1日土曜日

冬の音

夜の地下道を歩いていると、どこか遠くの方から、水の流れる音が聞こえてきます。
そちらに気を取られていると、目の前を鼠が無遠慮に横切りました。
気力を奪われた僕は、周りに人が居ないことを確認してから、何となく水の音を追うように、口笛を吹きました。
なぜこの道はこんなにも暗いのでしょう。東京は輝きを取り戻しているはずなのに、この道は未だ悲しみの中にあります。

地上に上がると、そこには川が流れていました。近くのオフィスには、フロアの所々に、残業をしている灯りが点り、それが川面に揺れています。
それぞれの役割を持った灯りが点っていますが、僕にはそれを知る由はありません。

外気は痛いほどの冷たさにもかかわらず、ポケットに突っ込んだ手が汗ばんでいます。
僕はため息を飲み込み、踵でアスファルトを打って、人通りの少ないビルの間に、足音を高く響かせました。