2014年12月2日火曜日

街の裏側に住む人

自転車に乗って、乾いた風を切っていると、指先が冷たくなり、冬の気配が近づいていることを感じさせます。

考え事をしながら隣りの街まで向っていると、ふと知らない路地を見つけました。
緩やかにカーブしているその路地を進み、突き当たりを左に曲がります。
しばらくすると犬の散歩をしている黒い服を着た中年の痩せた男性がいました。
くたびれた様子の老犬は足取りが重く、しばしば飼い主が立ち止まり、歩むペースを合わせています。
彼は決して犬の方を見ることはありません。ただ双方の日常を繰り返しているように見えました。
僕には彼が話しているところがイメージできませんでした。それどころか、顔さえ思い浮かべることができないのです。
この世界では、僕は闖入者であり、彼には僕の言葉が通じないでしょう。
僕はそっと街の裏側に入り込み、道を忘れた振りをします。
そして迷ったそぶりで辺りを見渡し、密かに目でディティールを拾いました。

親しく感じられる隣人でも、同じ考えを持っているわけではありません。
普段はそこから目を離していますが、知らない路地を曲がることで、そのことを再認識させられます。隣人のなかに知らない思考の路地があることは、時に僕を怯えさせ、殻に閉じこもりたいような気持ちにさせますが、そこに知らぬ顔で石を投げたり、音を響かせたりする作業は、美術の役割の大切な一つだと感じます。

夕日でピンク色に染まった街。
横断歩道の端に、車に轢かれた小さな猫が死んでいました。
カラスが数羽集っています。