真夏日、30度をこえる室温が、現在に留まろうとする意識を弱らせます。
なす術無く、押し寄せる記憶の波に身を任せました。
炎天下の裏道。どぶ川を渡すコンクリートの柱。
何処からともなく聞こえてくる、嵐のような蛙の声。
雨の予感。
背の高い雑草を引っ張ると、掌が露で濡れました。
擦っても消えない青い匂い。
僕はそこら中に生えている草を蹴り上げます。そして宙に舞った埃をくぐり、ただ走りました。
僕はあまり地図を見ません。
道に迷わなければ、この場所から離れることができないからです。