2015年10月14日水曜日

ケーキとお墓

気持ちのいい秋晴れの下、大学の近くにある広い墓地の中を歩きました。何人かの人々とすれ違いましたが、どの人も落ち着いた表情をしています。

そもそもなぜ墓地の中を歩いているかというと、その先にある評判の洋菓子店でケーキを買うためです。自分にとってケーキは嗜好品であり、この世を楽しむために欠かせません。

自分の死について考えると行き詰まりますが、他人の死には思い当たることがあります。その人がいなくなっても、世界は続きます。お墓は骨を納める場所ですが、本人がその様子を見ることはできません。そのため、お墓はいらないという考えもあるでしょう。
しかし、古代から人は墓を作ります。それは残されたものがその人に手を合わせるためだけではなく、自らの死後、誰かが自分のことを思い出していることを想像するためなのでしょうか。そうすると、すれ違う人々の顔の穏やかさに合点がいくのです。

帰り道、再びそのお墓を通るとき、行列をして買ったケーキを片手に、僕も死んだらお墓がほしいと初めて思いました。
それは必ず必要なものではないけれど、あれば生が死に飲込まれそうなときに、抗う力になってくれるかもしれません。

洋菓子店で見かけた猫が、墓地を抜けたお寺に先回りしていました。
猫はこの辺りの道に詳しいようです。