2018年3月9日金曜日

子供じみた夢

午前4時。目を開けると、天井には照明が静かにぶら下がっています。真昼の大都市で巨大な怪物と目が合うという子供じみた夢で目が覚めました。
夢の中で身動きの取れなくなっていた僕と落ち着いた気持ちで天井を見ている僕が、ひとつながりとなっていることに違和感を覚えます。
そのまましばらく布団の中に入っていると、外から細かな連続した音が聞こえてきました。カーテンを開けなくてもそれが雨音だと思うのは、経験からの推測に過ぎません。

キッチンで珈琲を淹れていると遠くからバイクの音が聞こえてきました。少し走っては停車するというリズムを繰り返しています。バイクに乗っているはずの人は、役割を遂行する機械に徹しており、人の気配はその音の陰に隠れています。
彼がバイクから降りた時には、僕らはフリードリヒの風景画について意見を交わし、場合によってはわかりあうことができるのかもしれません。

窓の外からはまだ連続した細かな音が聞こえてきます。もしこれが雨音ではないとしたら、自分の中に信じられることは、子供じみた夢以外にあるのでしょうか。

2018年3月5日月曜日

美じょん新報 第221号

美じょん新報 第218号に、銀座スルガ台画廊でのグループ展「葵の会」のレビューを書いていただいきました。
主筆の瀧悌三先生には継続して批評してくださり誠に感謝しております。

ビジョン企画出版社 「美じょん新報」
第221号 2月20日発行

宜しくお願いいたします。

2018年1月21日日曜日

「葵の会」




「葵の会」
安彦文平・安西大・大川心平・木下拓也・鴻崎正武・佐藤功・白河ノリヨリ・松田一聡・松村浩之・向川貴晃

1/15(月)〜1/20(土)
11〜19時 最終日17:30まで
銀座スルガ台画廊
東京都中央区銀座6-5-8 トップビル2F
03-3572-2828
ginza-surugadaigarou@vanilla.ocn.ne.jp
お近くにお越しの際には是非ご高覧ください。


2017年12月1日金曜日

美じょん新報 第218号

美じょん新報 第218号に、京王プラザホテルロビーギャラリーでの個展「遠い声」のレビューを書いていただいきました。
主筆の瀧悌三先生には継続して批評してくださり誠に感謝しております。

ビジョン企画出版社 「美じょん新報」
第218号 11月20日発行

宜しくお願いいたします。

2017年9月7日木曜日

大川心平 個展-遠い声-

「遠い声」

過去には確かに存在したが、時間の経過とともに本来の意味から離れ、断片的で不鮮明となった忘れ難いたくさんの記憶。これらが同一画面上で重なり合うことで結びつき、確かな輪郭を再び獲得します。そこで現れた風景は特定の場所や時間を表さないのにも関わらず、既視感や過ぎ去りし感情を呼び起こすのです。


大川心平 個展 「遠い声」

2017年10月1日(日)〜10月9日(月)
10時〜19時00分
※最終日16時まで

KEIO PLAZA HOTEL TOKYO
〒160−8330 東京都新宿区西新宿2−2−1 
京王プラザホテル 本階3階 / ロビーギャラリー
03−3344−0111

大作「Sing」を中心に、新シリーズ「Family」の連作、油彩、ドローイングの新作旧作を合わせて展示いたします。どうぞご高覧ください。

2017年8月8日火曜日

祭りの後

大きな橋を一本渡り、真昼の総合病院に行きました。そこは周辺のショッピングモールよりも混雑した様子で、静かな活気に満ちています。

診察を待つ人々は、血圧を測ってから、質素な椅子に腰掛け、順番を知らせるモニターをじっと見つめています。
気がつくと僕もその中に同化し、透明な存在として、診察番号が自らを表す全てであるかのように感じていました。

診察の順番は予定時刻を過ぎてもやって来ず、昼食を食べて待つこととなりました。
一階のカフェには空席がなく、僕は食欲もないまま三階のレストランに向かいました。
渡って来た川が一望できる席に座ると、すぐに店員が水を持って来ました。背の高い夏の雲を眺めながらその水を口に含むと、水はとても温く、ここが病院であることを思い出させました。

入り口に近い席には親子のように見える二人が向かい合って座っています。
微笑みを浮かべた老紳士に、手前の女性は「笑っている場合じゃないでしょ」と大きな声で責め立てていました。しかし老紳士は少しも表情を変えず、向かいに座った女性の背後をただ静かに見ています。
ここには何らかの病を抱えた人々が集っています。二人のうちのどちらが大きな病を抱えているのでしょうか。

川沿いの路肩に軽自動車が止まっています。側にはボンネットを開けて呆然としている水色のシャツの男が立っていました。
眼に映る全てのものが故障を抱えているかのように見えます。僕も水色のシャツの男と同じように、この状況になすすべなく立ちすくしているだけなのかもしれません。

病院の隣りの公園では櫓が建てられています。今夜は盆踊りがあるようです。この病院からどれほどの人が他界したのでしょうか。色とりどりの揺れる提灯。踊る魂。消えた肉体。

ラジオからは夜中に上陸する台風への警戒を呼びかける放送が流れています。
この街は祭りの後には雨の中でしょう。窓を叩く波のような風雨は、病院から届く彼らの鼓動のリズムと重なります。

どうか次の朝までこの波が途絶えませんように。

2017年8月5日土曜日

赤い自転車

赤い自転車を買いました。
大きく細いタイヤは僕を乗せて、一漕ぎするたびに鋭く風を切って進んでいきます。

現在の僕の心には生活における大きな充実感があります。
しかし日々の充実感を、生きる目的と混同すべきではありません。
世界がいかに美しくても、美術は存在理由を失わないからです。

セミの鳴き声は日ごとに強くなります。伸ばした腕は夏の日差しにジリジリと照らされ、シャツと肌との境界に跡を残しました。

いくら速く自転車を漕いだとしても、僕は僕から離れることはできませんが、心の中には永遠を想起させる地平が広がっています。