2010年12月16日木曜日

大きな男の小さな話

乗り換えのため、駅の連絡通路を歩いていると、背後から背の高い男が僕を追い越していきました。
色あせた紺色のスタジアムジャンパーに、細くて丈の短いジーンズ、黒い革製のショートブーツを身につけています。
黄色く長い髪を大きく揺らし、改札に向かう階段を上っていきました。

何より彼を印象づけているのは、右手に持った小さな紫色の花です。
花屋で買ったものではありません。弱々しい茎や葉は、手の熱でぐったりしています。
三輪あるその花は、細い水色のリボンで結ばれていました。

こんなにも寒い日に、何故彼は、林に分け入り、花を探さねばならなかったのでしょう。
角張った人差し指と親指が、不器用に紫色の花を摘みます。


寒い夜は考え事をしていることが多いです。
結露で曇った窓際に、冬に咲く花が欲しいと思いました。