塀には人型のシミがあって、子どもはそれに意味を与え、おもしろがったり、怖がったりするものです。
家の影になり、湿った地面には、地蜘蛛が巣を作ります。
塀に張り付いた白い綿のような巣を引っ張ると、蜘蛛があわてて出てきました。
それだけのことです。
ある日、捨てられた自転車のかごに入っている蛇の抜け殻を見つけました。
蛇は濡れた身体を左右に揺らし、音もなく草むらを抜けていったのでしょう。
夜になるのを待ち、縁側でこっそり口笛を吹きました。
蛇は姿を現しません。
僕は蛇のことなんて、本当はどうでもよかったのです。
ただ、まわりにあるいろんなことにがっかりしたのです。