2012年3月8日木曜日

僕にとってのデ・キリコ

不意にいろんなことが無意味に思え、投げやりな気分になることがあります。
僕はそんなとき、デ・キリコの絵を思い出すのです。

キリコの描く街角や部屋は、どんなにモチーフが詰め込まれていても、空っぽな印象があります。それは絵に時間軸や現実的空間を超えた設定をしているからでしょう。
空間を歪めると、そこには必ず隙間が生まれます。そこを彼は明暗を巧みに扱い、強い執着で埋めていくのです。
そうやって出来上がった絵は、宿命的な空虚さをもっているにも関わらず、どんな作品よりも鮮明な印象をあたえます。

キリコの絵は空っぽなものですが、そこには人間の生きている理由がこめられているのです。